今回は、私たちが普段あまり意識していない、唾液についてご紹介します。
1.唾液の役割
2.唾液量が少ないデメリット7つ
3.唾液量が減る原因4つ
4.唾液量を増やすメリット5つ
5.唾液を促す方法2つ
1.唾液の役割
唾液は、1日に1リットル〜1.5リットルの量が分泌されると言われていて、私たちのお口の中で、とても大事な働きをしています。
唾液は、
1）細菌が出す酸を中和する（緩衝作用）
2）口の中の食べ物を洗い流す（自浄作用）
3）歯の質を強くする（再石灰化作用）
4）細菌の働きを抑制する（殺菌作用）
5）食べ物の消化を助ける（消化作用）
6）食べ物を飲み込みやすくする
7）味を感じやすくする
などの働きがあります。
唾液は、お口の中だけでなく、食事を助けたり、身体に入ってからも消化を助けるといった作用があります。
唾液の量が少ないと、口の中の食べ物を洗い流せず、歯の質も強くなりにくく、抗酸化作用が働きにくくなってしまいます。
また、食後のお口の中はみんな、酸性になりますが、酸性の状態が続けば続くほど、歯が溶けやすい環境になってしまいます。
唾液は、その状態から中性に戻そうとするチカラがあり、人によりその力には差があります。
酸を中和する能力が低い人は、物を食べた後長時間歯が溶けることになってしまい、むし歯になりやすいと考えられます。
2.唾液量が少ないデメリット7つ
唾液量が減ると、ドライマウス（口腔乾燥症）という状態になることがあります。
その場合、下記7つのデメリットがあります。
1）むし歯・歯周病が悪化しやすい
2）ものの味を感じにくくなる
3）口内炎や口角炎になりやすい
4）口臭が発生しやすい
5）舌の痛みが起こる
6）ものが飲み込みにくく、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる
7）会話がしずらい
という症状が起こります。
誤嚥性肺炎とは、食べ物や飲み物などが気道に入り、お口の中の細菌が肺に入ることで起こってしまう肺炎です。
主に食事の時に起こりやすく、高齢者に多いと言われています。このような症状を起こさないためにも、唾液の量を増やすことはとても大切です。
3.唾液量が減る原因4つ
2でご説明した通り、唾液量が減ってしまうとお口の中に悪影響が及びます。
唾液が減る原因として、下記4つがあります。
1）身体の疾患があって減少している（パーキンソン病・シェーグレン症候群・エイズ・糖尿病など）
2）生活習慣や環境によって減少している（ストレス・口呼吸・不十分な口腔ケア・乾燥した室内など）
3）加齢に伴う機能低下によって減少している（女性の場合更年期障害以降に多い）
4）薬の副作用により減少している（抗うつ病薬・血圧降下剤など）
などが挙げられます。
※エイズの疾患が疑われる際は、唾液量の検査を行います
4.唾液量を増やすメリット5つ
唾液が増えたら、どんなメリットがあるか、ご紹介します。
1）お口が洗浄される・自浄作用が働く
唾液は、お口に残った食べ物のカスなどを洗い流してくれる作用があります。食事中に咀嚼することで、唾液の分泌をさらに促すことができます。
2）殺菌・抗菌作用がある
唾液は、お口の中の細菌の活性を抑える働きがあります。また、むし歯菌や歯周病菌の増殖も抑えてくれる働きがあります。
3）緩衝作用がある
食事を行うと、お口が酸性に傾きます。そして、酸性に傾いたお口は、歯が溶けてむし歯になりやすくなります。唾液の緩衝作用は、酸性に傾いたお口の中を、中性に保とうとしてくれる働きです。
4）保護・潤滑作用がある
唾液が分泌され、お口の中に潤いを与え、滑らかな状態を保つことで、お口の粘膜を保護する作用があります。のど・舌の動きがスムーズになり、会話や食事がしやすくなります。
5）再石灰化作用がある
食事によってお口の中が酸性に傾いて、溶けだしてしまった歯を修復してくれる働きがあります。この作用を再石灰化といいます。再石灰化の作用が働くことで、むし歯リスクを軽減します。
※画像引用元（アパガード）
ただ、唾液が増えることで、歯石ができやすいというデメリットもあります。
理由は、歯垢（プラーク）に唾液中にある石灰成分が加わり、歯石になりやすいためです。
その場合は、歯石になる前に念入りに歯みがきを行ったり、歯石になってしまった場合は、歯科医院でこまめに取ってもらうようにしましょう。
5.唾液を促す方法2つ
唾液を促す方法2つをご紹介します。
1）キシリトールを摂取する
キシリトールは、天然の白樺樹液から作られた代用甘味料です。
よくガムなどに使用されています。甘味料なので甘みはありますが、砂糖とは違い、口の中で歯を溶かす酸を作ることができないので、むし歯の原因にはなりません。
キシリトールには、唾液を促す効果があります。
2）唾液腺マッサージ
唾液は、運動や刺激でも分泌量が増えます。そのため、話す・歌う・笑うなど、日常的に積極的に口を動かすこと自体がトレーニングといえます。
さらに潤いのある、健康なお口に近づける方法の1つに唾液腺マッサージがあります。
唾液を分泌する唾液線は、下記の3ヶ所にあります。
・耳下腺
耳下腺は、耳たぶの前方、上の奥歯辺りの頬の部分です。梅干しやレモンなどのすっぱい食べ物を想像すると、唾液が出てくるところです。指全体で優しく押しながら、くるくる10回ほど回します。
・顎下腺
顎下腺は、顎の骨の内側の柔らかい部分です。指を当て、耳の下から顎の先まで3・4ヶ所を優しくそれぞれ5回ずつ押します。
・舌下腺
舌下腺は、顎の先の尖った部分の内側、舌の付け根にあります。下顎から舌を押し上げるように、両手の親指でゆっくり押します。これを10回ほど繰り返します。
この3ヶ所をマッサージすることで、唾液の分泌が促されます。
唾液が最近少ない気がする、など些細なお口の異常でも気付いた場合は、ぜひ一度歯科医院にご相談くださいね！
栗林歯科医院 歯科医師 監修
