重度の歯周病に侵された歯を残すための外科治療8つ

今回は、重度の歯周病に侵された歯を残すための、外科治療を8つご紹介します。

「歯周外科治療」は、歯周病の患者様に対して行います。
外科処置が必要な場合ですが、歯周病検査を行った時点で、歯科医師が判断します。

歯周病検査では、初診時に下記を調べます。
歯周病検査で調べること
1)歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットの深さ
2)歯の周りの骨の吸収度(レントゲンなど)

その後、歯みがき指導や歯科医院でクリーニングを行ってお口の環境を整えていき、お口の環境が改善された状態でもう一度、再検査を行ないます。
軽度の歯周病であればこの時点で改善したり、安定した状態になります。
しかし、骨の吸収が大きい箇所や、お掃除がしにくい箇所は症状が改善があまり認められず、歯周病が進行してしまいます。
症状の改善が認められなかった箇所に、歯周外科処置を行います。

1.バイ菌・歯石を取る、フラップ手術
2.歯ぐきを形成する、歯周切除術・整形術
3.歯周ポケットを改善する、歯肉弁根尖側移動術
4.被せ物を被せられるようにする、歯冠長延長術
5.骨の再生を行う、歯周組織再生療法
6.状態の悪い歯ぐきの形成を行う、遊離歯肉移植術(FGG)
7.歯の根っこが露出した部分を再生する、結合組織移植術(CTG)
8.歯の根っこの感染を改善する、分割抜歯

1.バイ菌・歯石を取る、フラップ手術

フラップ手術は、歯ぐきを切開し、歯ぐきの上からの歯周病治療では取れないバイ菌や歯石を除去します。
炎症がある歯周組織を除去し、バイ菌がつきにくい状態を作ります。

1)フラップ手術のメリット
・傷口が塞がれた状態で手術が終わるので、見た目の変化が少ない

2)フラップ手術のデメリット
・箇所によっては、バイ菌を完全に除去することが難しい

2.歯ぐきを形成する、歯周切除術・整形術

歯周切除術・整形術は、お薬などで歯ぐきが増殖してしまった場合などに行います。
歯ぐきが厚くなった骨の吸収は見られませんが、ポケットがある、という部分を改善するため、歯ぐきの切除・形成を行います。

1)歯周切除術・整形術のメリット
・お掃除しやすい歯ぐきの状態になる

2)歯周切除術・整形術のデメリット
・歯周病再発の可能性がある

3.歯周ポケットを改善する、歯肉弁根尖側移動術

歯肉弁根尖側移動術は、被せ物をする予定の歯に対して行います。
歯周ポケットが深くなってしまった部分の改善と、お掃除がしにくい部分の改善を行います。

1)歯肉弁根尖側移動術のメリット
・お掃除しやすい状態の歯ぐきになる
・歯周ポケットの再発が少ない

2)歯肉弁根尖側移動術のメリット
・見た目の変化が大きい
・しみやすくなる可能性がある

4.被せ物を被せられるようにする、歯冠長延長術

歯冠長延長術は、クラウンレングスニングとも呼ばれます。
歯冠長延長術は3と同様に、被せ物をする予定の歯に対して行います。

被せ物が合っていなかったり、歯ぐきの下にむし歯があると、歯周病が悪化する場合があります。
そのため、歯ぐきと骨を整えて、歯ぐきの下のむし歯の除去を行い、ピッタリと合う被せ物を被せられる状態に改善を行います。

1)歯冠長延長術のメリット
・歯ぐきの下のむし歯が除去できる
・抜歯しなくて良い可能性が増える
・見た目が改善する場合がある

2)歯冠長延長術のデメリット
・歯がしみやすくなる可能性がある
・見た目が悪くなる場合がある

5.骨の再生を行う、歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、歯に対して垂直に骨の吸収がある箇所に対して、骨の再生を目的に行います。
歯ぐきを開いて炎症のある組織を除去し、その中に、骨の再生を誘導する「タンパク質」の製剤を入れ、足りない量の「骨」を移植し、骨を再生したい部分に歯ぐきが入り込まないようにコラーゲンの「膜」を敷きます。

1)歯周組織再生療法のメリット
・骨の再生が見込める
・歯ぐきの理想的な形状が見込める

2)歯周組織再生療法のデメリット
・手術部位が大きい
骨の再生を誘導するために、「エムドゲイン」というタンパク質の製剤を使用します。
エムドゲインとは、エナメルマトリックスという豚の組織から抽出したタンパク質で、これを歯周病治療に使う事で、歯が発生する時と同じ環境を作り出し、歯周組織を再生できるものです。

エムドゲインはジェル状の液体のため、骨の欠損状態によっては、骨製剤を併用する場合があります。

骨の移植には、自分の骨を採取して移植する事が一番理想的ですが、自分の骨を採取すると患者様の負担も大きくなります。
そこで、人間の骨の成分構造によく似た牛の骨が材料源や人工的に作られた骨などを使用し、骨の再形成を促します。
この方法は、世界各国で歯科治療に使われています。
このように、骨の移植に使用する骨製剤は、その方の状態によって使い分けを行います。

ー骨製剤の種類ー
・自家骨→お口の中のさまざまな部分から採取した自分の骨
・他家骨→人由来の骨
・異種骨→動物由来の骨
・人工骨→人工的に作られた骨

歯ぐきが患部に入り込まないようにするには、「バイオガイド」を使用します。
バイオガイドは、ブタの天然コラーゲンを原材料とした、吸収性の膜(メンブレン)です。
手術した患部をこの膜で覆うことで、歯周組織の再生を図ります。
世界で1996年に発売が開始され、日本では2013年に厚生労働省から安全性と有効性が認められました。

歯周再生療法を行った後、3ヶ月間ぐらい待つと、歯周組織が再生してきます。

6.状態の悪い歯ぐきの形成を行う、遊離歯肉移植術(FGG)

遊離歯肉移植術(FGG)は、歯ぐきが下がって、歯が長くなってしまっている場合や、お掃除しにくい歯ぐきの形の改善を目的として行う手術です。
遊離歯肉移植術は、硬いぐきが少ない、お掃除しにくい歯ぐきの形の改善を目的として行われます。

手術部位を開き、上顎の歯ぐきから上皮と言われる組織のついた歯ぐきを採取し、移植したい部分に移植します。

1)遊離歯肉移植術(FGG)を行うメリット
・一度の手術で広範囲の処置が可能
・お掃除がしやすい歯ぐきの状態にできる

2)遊離歯肉移植術(FGG)を行うデメリット
・手術部位が2箇所になる(移植する部位と歯ぐきを取ってくる部位)
・移植した歯ぐきの色などが周囲と違うことがある

7.歯の根っこが露出した部分を再生する、結合組織移植術(CTG)

結合組織移植術(CTG)は、歯ぐきが下がり、歯の根っこが露出してしまった部分の歯ぐきを再生する目的で行われます。
前歯部分などの歯ぐきや、骨の薄い箇所で行われることが多いです。

手術部位を開き、6の遊離歯肉移植術と同様に、上顎の歯ぐきから上皮と言われる組織のついた歯ぐきを採取し、移植したい部分に移植します。

1)結合組織移植術(CTG)のメリット
・採取した歯ぐきに血液の供給が十分であれば、手術の成功率が高い
・歯ぐきの色が異なる審美性の問題が、遊離歯肉移植術よりも気にならない

2)結合組織移植術(CTG)のデメリット
・手術部位が2箇所になる(移植する部位と歯ぐきを取ってくる部位)
・上顎の歯ぐきが薄いとできない場合がある

8.歯の根っこの感染を改善する、分割抜歯

奥歯の歯は根が分かれており、その股の部分にバイ菌の感染が起こることがあります。
その場合は、歯周組織再生療法や、それでは解決できない場合は分割抜歯などを行なって、股の部分のケアのしやすさを改善する場合があります。

以上のように、歯周外科治療には多くのものがありますが、どの治療方法が適用か、どのようなリスクがあるのかは患者様それぞれによって変わります。
また、歯周病の改善・予防には普段からお口の中の状態を良くしておくことが大切です。
そのためには初期治療(むし歯治療・歯みがきチェック・歯科医院でのクリーニング)を行ったのち、必要であった場合は歯周外科を行い、治療が終わった後も2〜3ヶ月に1回のメインテナンスを継続することで初めて、健康なお口の中を保つ事ができます。

歯周病の症状が気になる、心配という方は、お気軽に当院スタッフにご相談ください。

栗林歯科医院 歯科医師 監修

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